各神社の獅子頭の並べ方を写真で具体的に見てみましょう。
※写真をクリックすると拡大できます。
以下は並べ方が変化している神社です。
下妙典の祭礼 春日神社
2023年に修復が行われましたが、そのお披露目では再び向かって左がオス、右がメスとなっていました。
2024年の祭礼では、また逆になりました。
関ケ島の祭礼 胡籙神社
2020年の行徳神社めぐりでは、祭礼のときと左右が逆になっていました。
関係者に話を伺ったところ、昔からオスが右でしたが、逆ではないかという意見があり、近年変えるようになったとのこと。
下妙典と同じようなタイミングでの変更となりますが、まったく逆の流れとなっているのが興味深いですね。
耳はオスメス両方ともずっと紐で縛られたままです。
これは、祭礼で獅子頭を激しく揺するため、耳が取れないための措置だそうです。
関ケ島では、台輪に載せずに担ぐので、縛っておかないと取れてしまうのでしょうね。
また、重くて(漆塗りで)滑る獅子頭を落とさないよう、担ぎ手が掴むための紐でもあるそうです。
新井の祭礼 熊野神社
皆さん、並べ方に試行錯誤されているようですね。
行徳の神輿関連施設での展示を見てみると…
行徳神輿ミュージアム
2022年に訪れたら、左右逆になっていました。
2024年には、元に戻っていました。
行徳ふれあい伝承館
ちなみに、こちらは博多祇園山笠で有名な櫛田神社。
当方が撮影した神輿の写真ですが、獅子頭も並んで写っていました。
ここからは当サイトの考察になりますが、獅子頭の並べ方の違いは、「左上右下(さじょううげ)」という日本の伝統礼法に基づくか、西洋マナーに基づくかによるのでは?と思います。
中国では唐の時代、皇帝は北極星を背にして南を向いて座るのがよいとされ、太陽は皇帝から見て左の東から昇り右の西に沈むことから、左の方を上位としたそうです。
日本には飛鳥時代にこの考え方が伝わり、「左を上位、右を下位」とするしきたりとなりました。これが「左上右下」です。中国では時代によりどちらが上位になるかは変わったそうですが、日本ではこの「左上右下」が伝統として受け継がれていきました。
この礼法にのっとると、左側が上座で右側が下座、つまり当人から見て左(向かって右)が男性となります。京雛がこの並べ方です。
一方、西洋では、英語で右を「正しい」の意味がある「right」というように、右側が上位とされています。オリンピックの表彰台も、金メダルを真ん中に、銀メダルが右(向かって左)、銅メダルが左(向かって右)ですね。
日本も文明開化後にはこの国際社会のルールを取り入れるようになり、皇室でも天皇が皇后の右(向かって左)に立たれるようになったことから、これが主流となり定着しました。関東雛や結婚式の高砂席などもこの並び方。今ではこちらの方が見慣れていますね。
結局のところ、どちらも間違いではなく、古来の様式にのっとるか、近年の様式にのっとるかの違いなのかもしれません。
このほか気になっているのは、神社にある狛犬との関連です。
狛犬って、犬というよりは獅子に似ていますよね。
ルーツを調べてみると、元はインドで仏を守る聖獣のライオンで、これが中国に伝わって獅子となり、朝鮮半島を経由して日本に伝わったそうです。日本では見たことのない異様な獣の姿を見て、「高麗の犬」→「こまいぬ」と呼ぶようになったのだとか。
奈良時代までは獅子2頭で一対だったのが、平安時代以降に、獅子と狛犬の組み合わせとなったそうです。
そして、口を開けている(阿行)のが獅子で向かって右、角があり口を閉じている(吽形)のが狛犬で向かって左となりました。
鎌倉時代には狛犬の角がなくなり、狛犬と獅子の違いは少なくなったようです。
神社でも、角のある狛犬自体なかなか見かけませんが、ある場合は向かって左に配置されているようです。
もし獅子頭の並び方もこれと関係があるのなら、角のあるオスが向かって左ということになるのでしょうか。
それとも、全く関連性はないのでしょうか。
詳しいことをご存知の方がいらっしゃいましたら、こちらからご教示いただけると幸いです。