獅子頭の並べ方

各神社の獅子頭の並べ方を写真で具体的に見てみましょう。

※写真をクリックすると拡大できます。

河原の祭礼 春日神社

向かって左がオス、右がメスです。

耳は両方下を向いています。

 

上妙典の祭礼 八幡神社

向かって左がオス、右がメスです。

耳は両方下を向いています。

 


押切の祭礼 稲荷神社

向かって左がオス、右がメスです。

耳は両方下を向いています。

 

水神宮祭礼 湊水神宮  

向かって右がオス、左がメスです。

耳は両方下を向いています。

 


四カ村の祭礼 香取神社 

向かって右がオス、左がメスです。

耳は両方下を向いています。


 

以下は並べ方が変化している神社です。

下妙典の祭礼 春日神社

祭礼のときの写真です。

向かって左がオス、右がメスです。

オスの耳だけ立っています。

 

と思いきや…


妙典まつりや


行徳神社めぐりでは左右逆になっていました。

 

関係者によると、昔からオスが左でしたが、近年変えるようになったとのこと。

 


2023年に修復が行われましたが、そのお披露目では再び向かって左がオス、右がメスとなっていました。


2024年の祭礼では、また逆になりました。


 

関ケ島の祭礼 胡籙神社

祭礼のときの写真です。

向かって右がオス、左がメスです。

 

ところがこちらも…


2018年の行徳ふれあい伝承館のオープニングイベントや


2020年の行徳神社めぐりでは、祭礼のときと左右が逆になっていました。

 

関係者に話を伺ったところ、昔からオスが右でしたが、逆ではないかという意見があり、近年変えるようになったとのこと。

 

下妙典と同じようなタイミングでの変更となりますが、まったく逆の流れとなっているのが興味深いですね。

 

耳はオスメス両方ともずっと紐で縛られたままです。

これは、祭礼で獅子頭を激しく揺するため、耳が取れないための措置だそうです。

関ケ島では、台輪に載せずに担ぐので、縛っておかないと取れてしまうのでしょうね。

また、重くて(漆塗りで)滑る獅子頭を落とさないよう、担ぎ手が掴むための紐でもあるそうです。

 


2021年の行徳神社めぐりでは、また元の並べ方に戻り、以降向かって右がオス、左がメスで定着したようです。


 

新井の祭礼 熊野神社

2020年の行徳神社めぐりのときの写真です。

向かって右が雌、左がオスです。

オスの耳だけ立っています。

 

 ところがこちらも…


2021年の行徳神社めぐりでは左右逆になっていました。

以降、向かって右がメス、左がオスで定着したようです。


皆さん、並べ方に試行錯誤されているようですね。

 

行徳の神輿関連施設での展示を見てみると…

行徳神輿ミュージアム

中台祐信作の獅子頭。

向かって左がオス、右がメスです。

耳は両方下を向いています。

 

と、思いきや…


2022年に訪れたら、左右逆になっていました。


2024年には、元に戻っていました。


 

行徳ふれあい伝承館

浅子周慶作の獅子頭。

向かって右がオス、左がメスです(左の金色の一対)

耳は両方立っています。

 

この二つの施設で、当初は並べ方が逆になっていましたが、今は揃っています。


 

ちなみに、こちらは博多祇園山笠で有名な櫛田神社。

当方が撮影した神輿の写真ですが、獅子頭も並んで写っていました。

向かって右がオス、左がメスですね。

耳はオスだけ立っています。



並べ方についての考察

ここからは当サイトの考察になりますが、獅子頭の並べ方の違いは、「左上右下(さじょううげ)」という日本の伝統礼法に基づくか、西洋マナーに基づくかによるのでは?と思います。

中国では唐の時代、皇帝は北極星を背にして南を向いて座るのがよいとされ、太陽は皇帝から見て左の東から昇り右の西に沈むことから、左の方を上位としたそうです。

日本には飛鳥時代にこの考え方が伝わり、「左を上位、右を下位」とするしきたりとなりました。これが「左上右下」です。中国では時代によりどちらが上位になるかは変わったそうですが、日本ではこの「左上右下」が伝統として受け継がれていきました。

この礼法にのっとると、左側が上座で右側が下座、つまり当人から見て左(向かって右)が男性となります。京雛がこの並べ方です。

古来のしきたりでは、左(向かって右)が上位/京雛
古来のしきたりでは、左(向かって右)が上位/京雛

一方、西洋では、英語で右を「正しい」の意味がある「right」というように、右側が上位とされています。オリンピックの表彰台も、金メダルを真ん中に、銀メダルが右(向かって左)、銅メダルが左(向かって右)ですね。

日本も文明開化後にはこの国際社会のルールを取り入れるようになり、皇室でも天皇が皇后の右(向かって左)に立たれるようになったことから、これが主流となり定着しました。関東雛や結婚式の高砂席などもこの並び方。今ではこちらの方が見慣れていますね。

明治以降は、右(向かって左)が上位/関東雛
明治以降は、右(向かって左)が上位/関東雛

 

 結局のところ、どちらも間違いではなく、古来の様式にのっとるか、近年の様式にのっとるかの違いなのかもしれません。

このほか気になっているのは、神社にある狛犬との関連です。

狛犬って、犬というよりは獅子に似ていますよね。

ルーツを調べてみると、元はインドで仏を守る聖獣のライオンで、これが中国に伝わって獅子となり、朝鮮半島を経由して日本に伝わったそうです。日本では見たことのない異様な獣の姿を見て、「高麗の犬」→「こまいぬ」と呼ぶようになったのだとか。

 

奈良時代までは獅子2頭で一対だったのが、平安時代以降に、獅子と狛犬の組み合わせとなったそうです。

そして、口を開けている(阿行)のが獅子で向かって右、角があり口を閉じている(吽形)のが狛犬で向かって左となりました。

「こまぱく/参道狛犬万博2018in市川市」(山元環樹氏主催)展示パネルより
「こまぱく/参道狛犬万博2018in市川市」(山元環樹氏主催)展示パネルより

 

鎌倉時代には狛犬の角がなくなり、狛犬と獅子の違いは少なくなったようです。

神社でも、角のある狛犬自体なかなか見かけませんが、ある場合は向かって左に配置されているようです。

 

もし獅子頭の並び方もこれと関係があるのなら、角のあるオスが向かって左ということになるのでしょうか。

それとも、全く関連性はないのでしょうか。

詳しいことをご存知の方がいらっしゃいましたら、こちらからご教示いただけると幸いです。